今日は仕事納めの日でしょうか。どちらさまも、今年一年、まことにお疲れ様でございました!
それでは、昨日の続き、『WILD SPACE』翻訳を参りましょう。昨日訳したベイオビ劇場、感動のフィナーレ部分、パドメがコクピットから医療室へ戻ってくるまでにもけっこう時間があったと思いますし、ベイオビは二人っきりで愛を確かめ合っていたかと思うと萌えまくりますね! パドメが「話相手には私がなるわ」と言っているのに、ベイルさんはオビ姫と二人でいたくて、やんわり断るとか、最高ですね!(笑)
「ありがとう」こそ言わない高慢な姫様気質のオビであっても、その想いは大きな青い瞳に情感豊かに現れていて、大人なベイルさんは、言葉はなくともオビのそんな気持ちを汲み取ってくれるあたり、さすがは10歳年上の余裕ですなあ。
思えば、きっとクワイ=ガンも、オビの言葉に出来ない気持ちを洞察して労ってくれたのでしょう。オビはそうした年上の男達の余裕に慣れてしまっていて、16歳も年下の若造であるアナキンには言葉を介さなければ気持ちが通じないということに気づくのが遅すぎたわけですなー。
ということで、ベイオビが確かな愛を築いた一方で、不穏な怒りと不満を抱くアナキンの箇所を翻訳いたします。まず、次に向かう指令がないまま、無為に宇宙港で時を過ごしているアナキンとアソーカの描写から始まるシーンなんですが、ここで、例の「ジェダイは瞑想するときはスッポンポンなのか?」という衝撃の事実について、今度はアナキンの例が言及されていることに注目!
アナキンは情報をすぐに知りたがるということをよくわかっていたにもかかわらず、アソーカはほんのしばらく、やや時間をおいて……、いや、かなりの時間をとって、アランティンⅥの宇宙港ハンガー9Cの入り口に立ちつくしていた。そこから、アナキンがフォースを高めるための柔軟体操をしているのを観察していたのだ。彼は裸足で、レギンスを脱ぎ、空っぽのハンガー・スペースいっぱいを使用していた。力強く、楽々と、フォースを完全にコントロールし、完璧な技と素早い動きで、75回転と後方二重宙返りをきめていた。
彼女はそれをカウントしていたのだ。
それから、アナキンは最後の宙返りをきめて着地すると、息一つ乱さず、すぐに片腕一本で前身を支える……四本の広げた指と親指だけで。
目を閉じたまま、彼は言った。
「なんだ、アソーカ?」
スカぴょんとは誰もかくれんぼできないわね、とアソーカは思った。
「コルサントからのホロメッセージが届きました、マスター」
すると彼は……もう彼女の目の前にいた。いったいいつのまに……アソーカはアナキンが移動する動きを捉えることができなかった。
「オビ=ワンか?」
アソーカは頷いた。
「ええ、オビ=ワンからです」
アナキンは彼女の横を通り過ぎる時、冷たい視線で見やった。
「あの人を待たせるな」
アナキンの後を小走りで必死に追いかけながら、アソーカは喉を振り絞って言った。
「あ~、スカぴょん?」
アナキンは速度をゆるめた。そして振り返った。冷たい視線は、慎重なまなざしに変わっている。アナキンも、だんだんアソーカのキャラクターを理解するようになってきているのだ。
「なんだ?」
「私が思うに……あのう、オビ=ワンはちょっと……加減が悪いように見えるの」
とたん、アソーカはアナキンに追いつくために全力疾走しなければならなくなった。
アナキンは司令官室に飛び込むと、荒々しい調子で、そこにいた人々を部屋から追い出した。皆はアナキンというジェダイを今ではよく知るようになっていたから、誰も文句一つ言わずに従った。アソーカは隅っこに身体を押し込め、聞き耳を立てた。
「オビ=ワン!」アナキンはデスクトップ上のホロ通信機に向かって叫んだ。「遅くなってすみません、僕、トレーニングしてたもので」
マスター・オビ=ワンのホログラムは、アナキンを上から下まで眺め渡した。
「なるほど、そのようだな」
アナキンはオビ=ワンのやんわりとした皮肉を無視した。
「あなた、やっと帰ってきたんですね! やっと。任務はうまくいったんですか?」
「ほどほどに、なんとかな。ありがとう」と、マスター・オビ=ワンは答えた。彼は感情を示さず、すばやく話題を転換した。「私はおまえに新しい担当任務を伝えに来たのだ」
はい。
どうやら、ジェダイの裸体トレーニングは、アナキンにも引き継がれているもようか? アナキンも裸足でレギンスを脱いでるって、どういうこと? 上半身は着ていて下半身はスッポンポン?? まあ、たぶんアナキンの場合は下着は履いているんでしょうけれども。じゃないと、アソーカがまじまじと見つめられるわけないからね。
で、アソーカの口から「オビ=ワンが、体調悪そうにみえるの」と聞いたとたん、脱兎の勢いで駆けだしていくアナキンです!(笑) 昨日の翻訳で、パドメが負傷したオビを見て、「アナキンがどんなに怒るでしょう!」と言ったシーンと呼応してますなあ♪
そして、みんなを追い出して、オビのホログラムに慌てて向かうアナキンが、オビに会いたくてたまらないふうで面白い。長いことママが留守で、一日千秋の思いでママを待ってたアナキン坊やって感じです☆ でも、けっこうオビは塩対応vv 過酷だった自分の任務については、一言も話さないつもりのようです。こういうところが、アナキンと気持ちのすれ違いに繋がっていってしまうんでしょうねえ。。。
しかし、アナキンはそんなオビの塩対応にもめげずに追究します。翻訳。↓
「アソーカも元気にしてますよ。ねえ、あなた、ほんとにちょっと、あまりいい調子には見えませんよ?」
「おまえの取り越し苦労な想像だ、アナキン。私のことより、ほら、おまえの新しいミッションについて聞きたくはないのか?」
「そりゃ、聞きたいですよ」アナキンは、くるりと目玉を回して答えた。「でも、このことについての議論は終わったとあなたが思っているといけないから。僕達、まだ議論の途中なんですよね。で、新しいミッションとは何です?」
話をそらそうとするオビに対して、執拗に聞きたがるアナキン。でも、オビはアナキンの注意を新しい任務へ振り向けようとして、その任務の詳細を話し始めます。アナキンも一応おとなしく聞くのですが、説明が終わると、すぐにまた危険な話題へと舞い戻るあたりが、いかにもアナキンです。翻訳。↓
「ありがとうございます、マスター」とアナキンは言った。「あー……、それで、あなたも当然、僕達と合流してこの任務に参加してくれるんですよね?」
マスター・オビ=ワンは首を振った。
「いや。私は別の大がかりな任務の情報収集を管理しなければならないだろう。たぶん、次の任務のためにな。だが、私はおまえが立派に追跡任務を成功させると信じているよ。前哨基地を見つけ出してくれ、アナキン。もしおまえが追跡できないと、ことはかなり複雑で重大な事態になってしまう」
ホロ通信は切られた。
アソーカは待ったが、アナキンは動こうとしなかった。その代わり、彼は空虚なホロ映像機をじっと見つめていた。
「大がかりなミッションの情報収集管理を担当ですって、そんな倒れる寸前のガタガタなデューバックみたいな様子をしているくせに?」アナキンはぶつぶつ呟いた。「また快復期の患者みたいな状態に戻りたいんですか、オビ=ワン? いったい、あなた、今まで何をしていたんだ?」
オビが明らかに顔も青ざめてひどい状態なのに、その理由をいっさい告げないことに、アナキンは心配と憤りを感じているわけです。
このあたり、ちょっと文意が汲み取りにくいんですが、原文は「my crippled old dewback」となっていまして、アナキンが親愛を込めてオビをデューバック(タトゥイーンに生息している四つ足クリーチャーのこと)に喩えているんです。だから、直訳すると、「壊れかけのガタガタのご老体な僕のデューバック」という意味になるわけ。
クローンウォーズでも、アナキンが親しみを込めてオビ=ワンを「ご老体」と呼ぶことがあるんですが、それがスピンオフ小説でも踏襲されているんですね///
はい、こうして『WILD SPACE』はアナオビで幕を閉じます。ベイオビのハッピーエンドに対して、アナオビのほの暗い行く末をうかがわすような、でもアナキンが深く深くオビ=ワンを愛していることがよくわかるシーンですよね~。
愛しているからこそ全てをわかちあいたいアナキンと、
愛しているからこそ相手を心配させたくないオビ=ワンと、
この二人の愛のすれ違いが大規模な宇宙戦争を引き起こしてしまうことになるなんて!
なお、『WILD SPACE』完読したので、このブログでこの小説の翻訳記事すべてに「オビ洋書『WILD SPACE』」というタグを付けておきました。検索しやすくなったかなと思います。